誰にも苦手なことのひとつやふたつはあるものです。苦手といってもニンジンが食べられないとか嫌味な上司がいるとかその悩みはさまざまです。今回は苦手なスポーツを克服したときの私の実際の体験を紹介し、そこから独自に編み出した苦手克服法を解説してみたいと思います。苦手を克服できずに悩んでいる方々のお役に立てればと思います。
スポーツ万能だと思われていた小学生時代
リレーでは、アンカーでビリからごぼう抜きでチームを優勝へ導き…
Nice run!
マット運動、鉄棒、跳び箱ではオリンピック選手のごとく華麗に…
Graceful!
ドッジボールでは圧倒的な強さをほこり…
Amazing!
ベースボールでは2学年上のチームでレギュラー…
What a tremendous home run!
とにかく運動という運動、スポーツというスポーツでできないものはない万能だと思われた小学生でした。
友だちからはちやほやされ、学校中で名が知れるほど運動では一目置かれた存在でした。
ところが、実は…
夏が来るのが怖い
一年に一度必ずやってくるプールの季節。
乱反射する水面
暑さを忘れさせるさわやかなミスト
ほのかに漂う塩素のにおい
満面の笑みで はしゃぐクラスの仲間たち
どれをとってもこの季節を彩る眩しい光景のはず…
なのですが、人知れず恐怖におののくスーパーチキン少年がそこにはいました。
目に水が入ることが命を奪われることよりも恐ろしく、顔を洗うときは1ミクロンの隙もつくらないよう貝のごとくぎゅっと目を閉じ、目薬は全力で抵抗する極度なビビりだったのです。
5年生まで1mも泳げない万能小学生
低学年
泳げない仲間も多く、水に顔をつけないように一緒に楽しんでいるふりをして乗り切る。
3年生
目を閉じたまま1秒間プールに潜るのを何度か見せて泳いでいるふりをして乗り切る。
4年生
顔を水につけずに泳ぐクロール(犬かき?)を編み出すも前には進まず…
5年生
ベースボールと足の速さで確固たる地位を築いた逃げ場のない万能小学生に奇跡が起こる。
耳の奥に激痛が走り病院で診察してもらうと、診察の結果はなんと、中耳炎!
残念ですが、今年のプールはあきらめてください。
問題はここからです。
学校での評判は日に日に高くなるばかりであるのと同時に、かっこつけの少年はますます逃げ場を失うのでした。
クラスでは、クラス委員に推挙され、言われるまま生徒会役員に立候補させられ当選。
一年というのは本当に早いもので、あっという間にギラギラと太陽の日差しが照り付ける暑い夏が近づき、命を落とすより恐ろしいプールの映像が脳裏をよぎる時間が多くなりました。必死にもがいても全く前に進まず苦しんでいる夢を毎晩のように見るようになり、いよいよ精神的に追い込まれていきます。
イメージトレーニング
夢
毎日が怖くて怖くて仕方ないチキンな生徒会副会長でベースボールチームのキャプテンは、いやおうなしに頭に映し出されるプールの映像に心が折れそうになりながらも必死に耐えるのでした。
ところが、ある日…
クロールで、一かき、二かき、三かきで25mプールを泳ぎ切る夢を見たのです。
何とも言えない解放感に包まれました。
できる…Yes,I can!
初めてのイメージトレーニング
根拠のない自信がみなぎってきました。
ただ、その数秒後には、チキンな自分が耳元でささやきます。
できないよね…
そうだった。今まで泳いだことがないんだった。現実に引き戻されます。
夢には、必死にもがくも前に進まず苦しんでいるいつもの自分が出てきます。
それでも、25mを泳ぎ切ったときのシーンが繰り返し頭に浮かぶようになります。
それからというもの連日そのシーンばかりイメージするようになりました。
やがて25mを泳ぎ切る夢を何度も見るようになり、まさに寝ても覚めてもそのことばかり。
テレビで泳ぎ方の番組が特集されると食い入るように見ていました。
プールのシーズンが始まるころには夢で見た映像とテレビで見た映像が重なり、リアルに泳いでいる感覚を味わうようになります。1、2、3。ゴール。3秒で25mを泳ぎ切ります。しかもテレビで見た正しいフォームで。
ただ、この時点でまだ実際には泳いでいません。
イメージの実践
学校でプールの授業が始まるまでに公営プールでイメージの実践です。
足のがくがくは、独り言のように寒いねなどと言ってごまかし、いざプールへ。
プールサイドに腰掛け、おそるおそる水に足を入れます。2年越しです。
心臓はばくばく…
顔が知れた友だちの視線が気になります。
熱いお風呂にそっと入るようにゆっくり体を沈めていきます。
あれっ…
意外と浅いな…
6年生になり身長が伸びたことで、足が完全にプールの底に着くようになっていたのです。
これで一気に勇気が湧いてきて、その勢いで水面に顔をつけてみるとあれほど恐ろしかった水の中で目を開けることも難なくできるのでした(当時はなぜかゴーグルは禁止だったような気がします。)。頭を沈めることもできました。
プールサイドにつかまり、1年生のときに教わったバタ足。できるぞ。
ビート版で遊んでいるふりをしてこっそりバタ足の練習。思ったより前に進むな。
友だちとふざけあいながら歩いてクロールの水をかく練習。かけるぞ。
蹴伸びをしてみる。いけそうだ。
試しにバタ足をしながら手をかいてみる。いける。
5m泳いでみる。できた!イメージ通りだ!
4年かけてできなかったことがなんと1日でできるなんてアンビリーバボー(unbelievable)!!!
実践してはイメージの繰り返し
5m泳げると初めて自転車に乗れたときの感覚と同じで、これまで泳げなかったのがまるでうそのようにスイスイ泳げるようになるものです。
そこからは、泳いでは、1、2、3。ゴール。のイメージの繰り返しです。
ただ、ひとつだけ問題が…
息継ぎができないのです。これはイメージしていませんでした。
ただ、そのため、いきなり25mを息継ぎなし(ノンブレス)で泳ぎ切るという芸当を見せつけることになり、クラスの仲間の度肝を抜く結果とはなるのですが。
息継ぎを覚えなければならないという新たな悩みができましたが、25mプールでは少なくとも25mに1回は息継ぎができると前向きにとらえ、そこはあまり問題にはしませんでした。
いよいよ学校でのプールの授業が始まるころには、泳いでは、1、2、3。ゴール。3秒で25mを泳ぎ切る同じ夢を頻繁に見るようになりました。
眠っている間に脳の海馬というところで生存に必要な情報かどうかの選別をおこなっていていると言われますが、目が覚めているときに強くイメージすることで、より記憶が残りやすくなるのだと思います。頻繁に夢を見るようになったのは、それだけ強くイメージしているという証なのではないかと思います。
ちなみに、海馬のはたらきについては次の本に詳しく書かれています。とても参考になると思いますよ。
本当の睡眠学習
メンタルトレーニング
授業ではどうだったかというと、5年間一度も泳いだことがない人間とは思えないほどの完璧な泳ぎができたと思います。息継ぎの点を除いては…。
学校代表にも選ばれ、人知れず恐怖におののいていたスーパーチキン少年が人に知られぬまま苦手を克服できたのはミラクルとも言えるものでした。
その当時は解放感いっぱいでそれ以上には何も考えませんでしたが、今思えば実は奇異な体験だったのではないかと思います。
スーパーチキン少年が実践していたのは、まさにメンタルトレーニングそのもの。
泳ぎ切って喜びを噛みしめている自分(=ゴール)を想像し、失敗して心が折れそうになっている自分、それを立て直す自分を繰り返しイメージすることで水に恐怖する自分と向き合い、そして、水泳という苦手を克服したのですから。
驚くべきは、なんとこの方法を自分で編み出したということなのです。
本当に驚きじゃないですか?
1988年カルガリーオリンピックのスピードスケート男子500mで銅メダルを獲得した黒岩彰選手がメンタルトレーニングを始めたのが、1984年のサラエボオリンピックで惨敗した後だと言われています。今でこそやっていないアスリートはいないほど当り前となったトレーニング法ですが、当時の日本では珍しい方法だったのです。
それをたかだか11歳のスーパーチキン少年が誰に教わるわけでもなく実践していたのですから。
メンタルトレーニングについてはこちらをどうぞ。
大人になってあらためて学習した理論なのですが、おススメです。
睡眠学習
5年間まったく泳ぐことができなかったスーパーチキン少年がどうして泳げるようになったのか?
それは、独自に編み出したメンタルトレーニングによるところが大きいのですが、さらに重要なのは、「夢(dreem)」ではないかと思います。
いわゆる「睡眠学習」です。
夢は起きた瞬間にそのほとんどを忘れてしまうものですが、起きているときにあまりにも強くイメージしたものは、夢に見やすく、しかも、起きたあとも記憶が鮮明に残りやすいのではないかと思います。
前述の海馬のはたらきを考えると合点がいくのです。
一般的に睡眠学習とは、眠っている間に音声を聞くことで脳に学習させるというようなものが多いのですが、その効果は???です。
確かに、眠っている間も脳ははたらき続けている(=眠らない)と言われていますので、一般的に行われている睡眠学習にもそれなりの効果はあるのかもしれません。
しかし、無意識にただ聞くだけでは記憶には残らないような気がします。
脳が記憶するのは是非とも生存に必要な情報だけですので、脳に、必要な情報だと思い込ませるには意識的に強くイメージすることが重要なのではないかと思うのです。
意識的に強くイメージするからこそ、脳(=海馬)で、「これは生存するために必要な情報だ」と勘違いして記憶として残す選択をしてくれるのだと思うのです。
ですから、眠っている間にただ聞いているだけではダメで、睡眠を利用して学習したければ起きている間に強く意識することが重要なのだと思います。
これが本当の「睡眠学習」というものだと思います。
苦手の克服
もし、どうしても苦手を克服したいと思うのでしたら、克服できている自分を強くイメージしてみてください。中途半端なイメージではダメです。強くイメージするのです。夢に見るほど。
もし、どうしても苦手な教科を克服したいという場合は、時間をかけることです。一度や二度考えてできなくてもあきらめず理解できるまで何度もトライすることです。寝ても覚めてもその教科に向き合い続けるのです。夢に見るほど。
もっとも、苦手なことを全て克服する必要はないと思います。
食べ物にはアレルギーというものがあって、それも脳の問題かどうかはわかりませんが、無理に食べて死に至るケースもあります。
苦手な上司がいる会社はさっさと辞めて構わないと思います。
ただ、これだけはどうしても克服したいというものがあるときは是非参考にしていただければ幸いです。
まとめ
運動万能だった小学生の私が、実は水泳だけは全くできなかったという意外な一面を克服するまでの体験を共有しました。
苦手なことを克服するためには、強くイメージし、意識的に取り組むことが重要です。夢に見るほど強くイメージすることで、脳がその情報を生存に必要なものとして記憶しやすくなるのです。
もしあなたにも克服したい苦手なことがあるなら、この記事が参考になれば幸いです。
コメント
更新応援です!!
週の後半も頑張りましょう!
ありがとうございます!
乗り切りましょう!